着物に合う香り・練香の香原料と名作香水【12選】


本記事は、着物に合う香りを探すプロジェクト第一段です。




こんにちは、Sunnyです。
お茶のお稽古で着物を着る生活をしています。香りものも好きですが、

着物のときにどんな香りなら不自然じゃないか?

を考えたいので、本日は「練香の材料からさかのぼって考える」アプローチで調べてみたいと思います。


目次
練香とは
練香の香原料(和名、英語名)
使われている香水11選
まとめ

練香とは



本日の手がかり、練香(ねりこう)とは、冬のお茶の席で炉中にいれ、熱で香らせているもの。「香合(こうごう)」という小さくてかわいいお道具に入れておきます。
 
これが「練香」2-3個をまとめ直して使います


練香は、数種類の香りの材料となる粉末を、蜜や梅肉で練りまとめたもの。ふつうは調合済のものを買いますが、体験教室があったり、手作りできるキットも売られています。

楽天で見つけた練香の「キット」はこちら↓

”【山田松の練香手作りセット】 煉香は、奈良時代に鑑真和上が様々な香薬と共に伝えたとされています。平安時代になると宮人たちが、独自に香りを調製し、その優劣を競う「薫物合」が盛んに行われました。お好みに合わせてお作り下さい。自分のオリジナル煉香をどうぞ。 <セット内容> 香原料9種【沈香・白檀・龍脳・丁字・甘松・安息香・薫陸・貝甲香・麝香】、炭粉・蜜 ”


こちらをヒントに、着物に合う香りを探してみましょう!

練香の香原料(和名、英語名)

オリジナル練香キットに含まれる香原料は、
「沈香・白檀・龍脳・丁字・甘松・安息香・薫陸・貝甲香・麝香」の9種類。

それから、香り以外の目的で入れられている「炭粉・蜜」の香気も少々あるかと思います。

ハチミツの匂い、よさそう

和名で描かれていますが、じつはアロマや香水の名前として聞いたことのある名前のものもありそうです。簡単に説明していきます。

沈香(よみ:じんこう、英語名:アガーウッド)

ジンチョウゲ科の木が分泌する樹液がもとになりますが、樹脂になり熟成するまで数十年単位の非常に長い時間がかかります。大変に貴重かつ人工的に再現することも難しいとされ、奈良時代に聖武天皇に献上されて東大寺正倉院の宝物殿に納められている香木は日本の宝物のひとつです(らんじゃたい蘭奢待←漢字に「東大寺」が隠れています!)日本書紀や源氏物語の世界にも登場します。
スモーキーで重い、瞑想を誘うような奥深い香り。

白檀(よみ:びゃくだん、英語名:サンダルウッド)

ビャクダン科という木で、樹高は9mほどにもなり、東インドを中心に生活にもひろく役立てられています。香りは木の芯部や根より取ります。古くから重宝されてきた香りであり、インドでは「チャンダン、チャンダナ」、日本では「栴檀(せんだん)」とも呼ばれました。
甘く爽やかなウッド系の香りで、気持ちがあたたかくなる感じがします


龍脳(よみ:りゅうのう、英語名:カンファー)

龍能樹という木から採取される香材料で、樟脳(しょうのう)に似た香りです。樟脳がクスノキ科に対し、龍能はフタバガキ科です。ボルネオ島、別名インドネシアに生長し、樹高50~60m、直径2mにもなるそう。乱獲や伐採によってレッドリスト(絶滅危惧種)に指定されているため、今日ではほとんどが人工的に再現されたものです。

すがすがしい、すっきりとしながら甘さのある、墨(すみ)の香り。


丁字(よみ:ちょうじ、英語名:クローブ)

インドネシア原産、スパイスとしてもおなじみのフトモモ科・チョウジノキの、開花直前の花のつぼみを乾燥させたものです。飲み物のチャイや肉料理、クリスマスのころの香りクラフトにもよく登場するのは、香りの強さから臭みけし・魔除けとして用いられることに起因します。含香(がんこう)といって、お坊さんは口の中を清めることにも使います。

辛みと甘みを感じる強い香気です。


甘松(よみ:かんしょう、英語名:スパイクナード)

ネパールやヒマラヤ山のあたり、内陸の山岳地帯原産の多年生草の茎と根から採取されます。オミナエシ科のこの草は、古くから鎮痛・鎮静効果のある薬草植物として治療に利用され、聖書でマグダラのマリアが使用した「ナルドの香油」は、当時の交易でやってきたこの稀少(高価)な香油だったと考えられています。

土のような、薬のような、カビのような匂いがするそうです。


安息香(よみ:あんそくこう、英語名:ベンゾイン)

エゴイノキ科で樹高20mにもなる木に傷を付け、分泌された樹液が樹脂となったものを利用します。文字通りに呼吸や気分を落ち着かせ、咳や喘鳴を鎮めたり、抗菌や防腐効果もあります。

「バニラ」でおなじみのバニリンという香成分が含まれ、甘く深い香りです。

樹脂系の材料には、香りを長持ちさせる効果もあります。


薫陸(よみ:くんろく、英語名:クンロク)

薫陸はインドやペルシャのあたりの高地に生えるクンロコウ科の樹液が原料となりますが、樹脂となった後さらに土中で半化石化したものを焚いた時の香りです。薫陸の名前は『名医別録(1~3世紀)』に現れたほど古いので、同じく樹脂系の香原料:没薬(ミルラ)、オリバナム、乳香(フランキンセンス)と混同されます。古代では「琥珀は焚き物」という認識だったようです。

樹木の枝や葉を感じる香りに、柑橘のような香りが混じっています。


麝香(よみ:じゃこう、英語名:ムスク)

動物系の香原料で、オスのジャコウジカの出すフェロモン(香嚢という場所から分泌される)液を乾燥させて得られる香料です。薬として強心や興奮作用があるため、宇津救命〇や六神〇にも成分として入っているとか。香水など香りアイテムでも「ムスク」の名前はポピュラーですが、自然の材料は非常に貴重であるため、人工ムスクが用いられています(イメージに合わせて、ホワイト、レッド、カシミア、クリスタルなど別々に名前がついています)

甘い香りです。


貝甲香(よみ:かいこうこう)

貝香、甲香(かいこう、こうこう)は巻貝の口の部分で蓋になっている部分で、砕いて香りを保持するための材料として加えられてきました。本体の主な成分である炭酸カルシウムは燃焼時に香りを出さないので、あるとすれば貝に付着している微生物などの蛋白質の香りだそうです(理科の実験みたいな話になってきましたね) 

香りを保持するための材料です。

炭粉(よみ:すみこ)、蜜(よみ:みつ)

それぞれ「着火させる、火を誘引する」「粉末状の材料を練りあわせ、固める」目的のものです。炭は木材を蒸し焼きにする、燃焼(ただ燃やす)とは違う方法で作られており、点火した時の煙は有機酸やミネラルを発しており、料理の炭火焼きには独特の風味が加味されます。蜜や糖分は保湿として使用します(水だとカビを発生させるため)。


分類してみると、
[樹脂系]沈香アガーウッド、龍脳カンファー、安息香ベンゾイン、薫陸クンロク
[ウッド系]白檀サンダルウッド、甘松スパイクナード
[スパイス系]丁子クローブ
[動物系]麝香ムスク

となります。


使われている名香水12選


[樹脂系]沈香アガーウッド、龍脳カンファー、安息香ベンゾイン、薫陸クンロク
[ウッド系]白檀サンダルウッド、甘松スパイクナード
[スパイス系]丁子クローブ
[動物系]麝香ムスク

こちらをキーに、スプレータイプ・現在でも購入可なものを探しました(いかに名香水とはいえ、手に入らないのでは残念!)


GUERLAN(ゲラン)

ミツコ(左)、サムサラ(左)

「着物に合う」と口コミを探すと、必ず名前の挙がるゲランから2点。小説の主人公の名前からとられた「ミツコ」は、初めて桃の香りを使った香水であるとともに、シプレー調の名香として地位を築いています。ローズ、ジャスミン、イランイランと「うっ濃ゆそう…!」と想像の付く香料を、オークモス、ベチパーなどのウッド系とスパイス、アンバー(琥珀)を使って奇跡のように瓶の中に収めている。ゲランの香水を好きな人は、「設計」という言葉を使いますね。女性向けかと思いますが、チャップリンも愛用していたとか。
サムサラの意味はサンスクリット語で「輪廻」。ジャスミンとイランイランのエキゾチックな花がトップに香り、アイリスとムスク、サンダルウッド(白檀)とムスク(麝香)に変化していくそう。この白檀感が強いとのこと。お寺を思い出すほどらしい(体調によるのかな) まだ嗅いだことがないので、入手してみたい香りです。



Jean Desprez(ジャン・デプレ)

バル・ア・ヴェルサイユ


ヴェルサイユ宮殿のBal=舞踏会をテーマにした香水。乏しい(映画や漫画からの)知識ですが、あれですね、ヴェルサイユ宮がヴェルサイユ宮として機能していた、あのキラキラのイメージの、革命前夜みたいな濃い気配のことでしょうか。ローズ、ネロリ、ジャスミンの香料的に高級な花々から、樹脂系・ウッド系・ムスクも投入。振り向いても人・人・人(しかもキラキラ&欲望にギラギラ)みたいな密度らしいです。



AMOUAGE(アムアージュ)

ジュビレーションXXV

ミツコに似ているボトルだな?と思ってみてみた、あちこちで「高級」のお墨付きをもらっていたメンズ向け香水(あまりメジャーなメゾンじゃないですかね)海外アマゾンで見てみましたが、結構レビュー多く集めていました。生産国はオマーンで、名産品であるミルラ(乳香)をはじめ、フランキンセンス、スパイスなど高品質のものを使用。ソロモン王みたいな気分になれるかもしれません(香調の「オリエンタル」って、ヨーロッパから見たオリエンタル=中東やエジプト方面のことなのですね)




CHANEL(シャネル)
ブルー

「なんでココとかNo.5じゃないの」と思われる方もいらっしゃりそうですが、練香の香原料には「花フローラル」が含まれていなかったので、なるべくそれを避けたリストにしたかったのです(COCOとNo.5も口コミよかったです)そうしたらメンズ香水を3つ入れることになってしまいましたが、これは2番目です。レディースと違って、クール、落ち着きなどを歌っていることが多いメンズフレグランスは、リラックスできる感じなので、寝る前などにつける用に好きなんです。ナツメグとジンジャーが貫く中、柑橘類とウッド、樹脂(フランキンセンス)、樹液(パチョリとラブダナム)が絡まっていきます。




カルティエ
ル ベゼ デュ ドラゴン

訳すると「ドラゴンの口づけ」という名前になります。中国をイメージした、オリエンタル系の作品なのでしょう。アマレットは生アーモンドの核=杏仁(アンニン豆腐)の甘みでも独特のものですよね。トップはアマレット、ネロリ、オレンジ、ガーデニア。ミドルはアイリス、ブルガリアローズ、シダーウッド、白檀、ムスク。ラストはベティバー、パチュリ、安息香、竜涎香(りゅうぜんこう:マッコウクジラの腸内にできる結石)です。




トム・フォード 
ブラック オーキッド

はじめて作出された「黒い蘭」を、香料として農場ごと買い取って使用したという作品。モダンであるとともに永遠、リッチ ダーク アコード、ラグジュアリーでセンシュアスな香り。
トップ:ブラックカラント、イランイラン ミドル:ハニーサックル、リリー、ガーデニア、プラム、ペッパー、オーキッド ベース:サンダルウッド、パチョリ、シナモン、バニラ、ミルク




COMME des GARÇONS(コム・デ・ガルソン)

リンクを張っておいてあれですが、謎の香水。皆さんの口コミ(表現)が非常にミステリアス。墨の香り、墨と金箔と顔料(岩絵の具)を使って描かれた、屏風に顔を近づけた時の香りがするらしい。テーマは「テクノとオーガニックの融合」。含まれる「アルデヒド」は化学式R-CHOで示される有機化合物で「シャネルのNo.5」が大ヒットさせたことでも有名な香原料、人間の体臭めいた脂肪っぽい匂いがするそうです。CDGにはほかにも「日本」をテーマにした香水が色々ありました。「コンクリート」とかね(前衛ですね…)




資生堂(しせいどう)

黒に金の秋草でしょうか、「蒔絵」をイメージしたボトルに入っている。見た目よりずっとお手頃(軽めの「コロン」というのもありますが)。1964年東京五輪の年に発表され、現在もまだ変わらない姿で手に入るなんて、世界的にもかなり珍しいのではないでしょうか。ミュゲやガーデニア(スズランとクチナシ)の、あくまで主張が控えめな花の香りから始まり、中間はシプレー調のコケ成分つよめ、ラストは静かな(モノクロ映画の)畳の部屋へ入ったかのような、和敬清寂な世界観へいざなわれていくとのこと。口コミ(表現)が非常に詩的…資生堂への愛なのかも。




Christian Dior(クリスチャン・ディオール)
左)デューン 右)ファーレンハイト


 
ディオールから二つ。ディオールは「名香」でもリニューアルして出してしまうので、昔の評判のものそのままを手に入れることが難しいようです。DUNEはフランス語で「砂丘」。ごりごりのものではなくバカンスの暑い日に砂浜で見た白昼夢のような、あくまで「装いの仕上げ」としてのファッション性を保っている感じ。「華氏」という名のファーレンハイトのほうは、レモンと金木犀とラベンダーの「清潔?」な香りで始まり(はてなをつけるのは、これらがよく芳香剤(何かの香りのマスク)として用いられることを想起するから)、ジャスミンとシダーウッド【白檀】に変わって存在をまき散らしたあと、レザー、ムスク(麝香)、アンバー(琥珀)とおさまってゆく。美形で若手でクールなお坊さんのような印象ですね(お坊さんが香水を吹きつけるかはさておき…)

ムッシュ・ディオールが活躍できたのって、大戦後のほんの約10年間だったんですね。年を取ったら、そういう「時間」のこともわかるようになって、それまでのガリアーノやグロスや化粧水の「新技術・最先端のディオール」以外の魅力も見つけられたのが今回の収穫でした。



Elizabeth Arden(エリザベス・アーデン)
レッドドア


「グリーンティー」は「プチプラ編」で調べたいなと思ったので、エリザベス・アーデンでもう一つ好きな「レッドドア」はこちらでご紹介。本当に素敵な商品を作ってくれて、それをよい品質で横展開(ボディコスメとか)&縦展開(バリエーションや新作)している、信頼しているメゾンです。レッドドアは、空港でミニボトルで買ってきたときから好きになり、大事に使って「日本じゃなかなか買えない?」ことからもっと大事になったのですが、最近手に入るようです。アニス(八角)が入っているし、ハニー(蜜)も、ラストノートのサンダルウッド(白檀)、セダー(沈香)、ムスク(麝香)、アンバー(琥珀)、ベンゾイン(安息香)も重厚ですよね。自然体な、女性のままで仕事も癒しも楽しんで、人生はいいよねと肯定できる力が湧いてきます。



まとめ

リラックスしましょう

茶道具の練香の香原料について、どんなものであるかと、そのカタカナ名を調べました。また、それらと同じ香りの系統である香水を、今回は発表されてからロングセラーの評価を受けているものに厳選してご紹介しました。

香水は使うのに気軽ですし、「名香水」と呼ばれているものなら、きっと着物を着るお仲間内でも名前が通用するでしょう。

最後に、あくまで香水を利用するときは「着物自体にふりかけないこと!」
の注意喚起をしたいと思います。

着替える前に吹き付けたり、前夜寝る前に使って楽しむのがいいですよ。



現代的な「プチプラ編」もご紹介したいと思っていますので、お楽しみに。




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